カクテル梅酒が和精油を生んだ!/KISHU-WAKA:中野BC株式会社(和歌山県海南市)

2018年5月30日和精油めぐり

梅酒と和精油の意外な関係

蒸留という技術。

精油を作るためには欠かせない技術ですが、もとは焼酎等お酒の蒸留の技術として日本に伝わりました。そういう視点から見ると、焼酎などの蒸留酒を手掛けける中野BC株式会社が精油作りをしているのもつながりを感じます。

でも、蒸留という技術を持ちながら、精油作りをしている酒造メーカーは他にはありません.

そして、中野BC株式会社も焼酎を作っているだけだったなら、精油作りにはつながっていなかったのではないかと思うのです。

中野BC株式会社と精油作り。

それがつながったのは、”梅酒”がきっかけ。といっても、梅の精油を作っているのではありません。

※写真は本社に行かないと購入できない量り売りの梅酒

中野BC株式会社では和歌山の梅を使って梅酒作りをしています。和歌山と言えば梅の産地ですものね。

残念ながら、梅酒の製造量トップの会社は他府県。でもね、量の問題じゃないんです。中野BC株式会社は梅酒の種類では圧倒的にトップなんです。

カクテル梅酒への取り組みとアロマ

和歌山の柑橘系をはじめとした果物の恵みを使った梅酒(カクテル梅酒/果汁を配合した梅酒)を手掛けておられるのですが、その数40種類!!

40種類の梅酒ってすごい!!

カクテル梅酒に必要な果汁のうち、柑橘系の果汁は地元有田市にある株式会社伊藤農園から提供を受けているそう。

株式会社伊藤農園は、創業1897年!100年以上続く農園で、提携農家の皆さんとともに、農薬を減らしたり有機肥料にこだわって果樹を育ている場所で、ジュースを絞るところにも工夫があります。

昔からの手絞りの工程を再現した製造方法で、二つに切った柑橘系果物を絞るため、皮を傷つけず、果肉だけをジュースにすることができるのです。

そのジュースのおいしさはもちろん保証済み。

今まではその皮は廃棄していましたが、全く傷つかずの皮。精油成分が逃げずに残った皮がもったいない…ということから、取引関係にあった中野BC株式会社に相談があったのがKISHU-WAKAの始まりでした。

とはいえ、精油を作るのはお酒の蒸留装置ではできません。

必要となるのは、精油を作るための特別な蒸留装置ですが、ここにもプロの技術が詰まってます。

株式会社本村製作所の精油蒸留装置。私が惚れた装置です。

中野BC株式会社が使っていた装置が、以前九州でご紹介した株式会社本村製作所のものだったのも一つのご縁だったのかもしれません。

とはいえ良い装置を使うにはそれなりの予算が必要。

それにやってみると分かりますが、材と装置があるからといって、誰でも簡単にビジネスにできるほど精油作りは甘くありません。

材の下処理、加熱温度、加熱時間…和歌山県の補助事業を活用しながら、2年間の試験期間を経て、KISHU-WAKAが誕生したのです。

KISHU-WAKAのプロジェクトにかかわっているのは、5人の女性のメンバー。

経営陣は男性ですが”アロマは女性だろ”と社内人選が行われ、女性だけのチームが誕生しました。とはいえ、精油の抽出はちょっと力仕事なので男性の担当。笑

抽出しているところを見学させていただきましたが、精油を作る前の成分がたくさんある皮の香りと抽出後の皮の香りを比べると、精油成分がしっかり抽出されていることがわかる香りの変化。

精油が良い香りなのは知っていても、材の変化をかぐことこなかなかないので貴重な体験でした。ちゃんとよい香り=芳香成分が抽出されてるんだなってわかる瞬間はワクワクしますね。

女性の感性を生かしたアロマプロジェクト

さて、5人の女性で始まったプロジェクトは精油の知識もない状態からのスタートでした。

※写真左はプロジェクトメンバーでもある広報の妹尾さん

水蒸気蒸留という方法で何かを抽出する技術は、酒造で培ったノウハウがある為自信はありましたが、精油というもの自体や、それを販売するには知識が必要。アロマの奥深さを勉強しながら、お客様に伝えることの難しさとジレンマを感じる日々。

精油って、薬理作用のある成分をたっぷり含んでいますし、効果効能を伝えたくなりますが、そこには”薬事法”などの法規制がかかります。

良いものを、法に抵触せずどう伝えていくのか。これは日本産の精油だけではありません。アロマセラピーが日本に入ってきてから今日に至るまでの課題なのです。

個人的に言えば、私は精油が薬にはなって欲しくないんです。今のように気軽に使えるものであって欲しいです。だからこそ、私たちアロマセラピストや生産者が正しい情報を発信しなければならないとも思います。

ちょっと話がそれてしまいました。

日本の精油のガイドブックのような本はまだ販売されていませんし、日本産精油が認知されだしたとはいえ、まだまだ精油は海外のものが主流。

海外に比べ小ロットな日本の精油の成分分析をイチからやり、品質の担保をするには、相当なコストがかかります。精油って自然のものなので、ロットによってばらつきが大きいんです。
合成物のように、いつでも同じというわけにはいかない。そしてロットが小さければその分ばらつきも大きくなります。それも良さの一つだと思うんですけどね。

2018年春には紀州WAKAの精油にサンショウが仲間入り!

精油のことや、精油作りから誕生したお酒のお話はラジオで♪

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工場見学でお邪魔した和精油メーカー
中野BC株式会社(KISHU‐WAKA)
642‐0034
和歌山県海南市藤白758-45
TEL:073(482)1234/ FAX: 073(482)2244
中野BC株式会社 妹尾綾さんは2018年3月14日、21日のラヘラジに登場してくださいました。

和精油めぐり

Posted by Koyama Junko