カクテル梅酒が和精油を生んだ!/KISHU-WAKA:中野BC株式会社(和歌山県海南市)

梅酒と和精油の意外な関係

蒸留という技術。

精油を作るためには欠かせない技術ですが、もとは焼酎等お酒の蒸留の技術として日本に伝わりました。そういう視点から見ると、焼酎などの蒸留酒を手掛けける中野BC株式会社が精油作りをしているのもつながりを感じます。

でも、蒸留という技術を持ちながら、精油作りをしている酒造メーカーは他にはありません.

そして、中野BC株式会社も焼酎を作っているだけだったなら、精油作りにはつながっていなかったのではないかと思うのです。

中野BC株式会社と精油作り。

それがつながったのは、”梅酒”がきっかけ。といっても、梅の精油を作っているのではありません。

※写真は本社に行かないと購入できない量り売りの梅酒

中野BC株式会社では和歌山の梅を使って梅酒作りをしています。和歌山と言えば梅の産地ですものね。

残念ながら、梅酒の製造量トップの会社は他府県。でもね、量の問題じゃないんです。中野BC株式会社は梅酒の種類では圧倒的にトップなんです。

カクテル梅酒への取り組みとアロマ

和歌山の柑橘系をはじめとした果物の恵みを使った梅酒(カクテル梅酒/果汁を配合した梅酒)を手掛けておられるのですが、その数40種類!!

40種類の梅酒ってすごい!!

カクテル梅酒に必要な果汁のうち、柑橘系の果汁は地元有田市にある株式会社伊藤農園から提供を受けているそう。

株式会社伊藤農園は、創業1897年!100年以上続く農園で、提携農家の皆さんとともに、農薬を減らしたり有機肥料にこだわって果樹を育ている場所で、ジュースを絞るところにも工夫があります。

昔からの手絞りの工程を再現した製造方法で、二つに切った柑橘系果物を絞るため、皮を傷つけず、果肉だけをジュースにすることができるのです。

そのジュースのおいしさはもちろん保証済み。

今まではその皮は廃棄していましたが、全く傷つかずの皮。精油成分が逃げずに残った皮がもったいない…ということから、取引関係にあった中野BC株式会社に相談があったのがKISHU-WAKAの始まりでした。

とはいえ、精油を作るのはお酒の蒸留装置ではできません。

必要となるのは、精油を作るための特別な蒸留装置ですが、ここにもプロの技術が詰まってます。

株式会社本村製作所の精油蒸留装置。私が惚れた装置です。

中野BC株式会社が使っていた装置が、以前九州でご紹介した株式会社本村製作所のものだったのも一つのご縁だったのかもしれません。

とはいえ良い装置を使うにはそれなりの予算が必要。

それにやってみると分かりますが、材と装置があるからといって、誰でも簡単にビジネスにできるほど精油作りは甘くありません。

材の下処理、加熱温度、加熱時間…和歌山県の補助事業を活用しながら、2年間の試験期間を経て、KISHU-WAKAが誕生したのです。

KISHU-WAKAのプロジェクトにかかわっているのは、5人の女性のメンバー。

経営陣は男性ですが”アロマは女性だろ”と社内人選が行われ、女性だけのチームが誕生しました。とはいえ、精油の抽出はちょっと力仕事なので男性の担当。笑

抽出しているところを見学させていただきましたが、精油を作る前の成分がたくさんある皮の香りと抽出後の皮の香りを比べると、精油成分がしっかり抽出されていることがわかる香りの変化。

精油が良い香りなのは知っていても、材の変化をかぐことこなかなかないので貴重な体験でした。ちゃんとよい香り=芳香成分が抽出されてるんだなってわかる瞬間はワクワクしますね。

女性の感性を生かしたアロマプロジェクト

さて、5人の女性で始まったプロジェクトは精油の知識もない状態からのスタートでした。

※写真左はプロジェクトメンバーでもある広報の妹尾さん

水蒸気蒸留という方法で何かを抽出する技術は、酒造で培ったノウハウがある為自信はありましたが、精油というもの自体や、それを販売するには知識が必要。アロマの奥深さを勉強しながら、お客様に伝えることの難しさとジレンマを感じる日々。

精油って、薬理作用のある成分をたっぷり含んでいますし、効果効能を伝えたくなりますが、そこには”薬事法”などの法規制がかかります。

良いものを、法に抵触せずどう伝えていくのか。これは日本産の精油だけではありません。アロマセラピーが日本に入ってきてから今日に至るまでの課題なのです。

個人的に言えば、私は精油が薬にはなって欲しくないんです。今のように気軽に使えるものであって欲しいです。だからこそ、私たちアロマセラピストや生産者が正しい情報を発信しなければならないとも思います。

ちょっと話がそれてしまいました。

日本の精油のガイドブックのような本はまだ販売されていませんし、日本産精油が認知されだしたとはいえ、まだまだ精油は海外のものが主流。

海外に比べ小ロットな日本の精油の成分分析をイチからやり、品質の担保をするには、相当なコストがかかります。精油って自然のものなので、ロットによってばらつきが大きいんです。
合成物のように、いつでも同じというわけにはいかない。そしてロットが小さければその分ばらつきも大きくなります。それも良さの一つだと思うんですけどね。

2018年春には紀州WAKAの精油にサンショウが仲間入り!

精油のことや、精油作りから誕生したお酒のお話はラジオで♪

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工場見学でお邪魔した和精油メーカー
中野BC株式会社(KISHU‐WAKA)
642‐0034
和歌山県海南市藤白758-45
TEL:073(482)1234/ FAX: 073(482)2244
中野BC株式会社 妹尾綾さんは2018年3月14日、21日のラヘラジに登場してくださいました。

少年が夢見た酒作りから生まれた和精油/KISHU-WAKA:中野BC株式会社(和歌山県海南市)

日本庭園は蒸留の冷却水が始まり

2018年1月のある日。 爆弾低気圧が関西を直撃し、無事にたどり着けるだろうかと不安になりながら出発した和歌山にある精油ブランドKISHU-WAKAへの旅路。

事前にHPをチェックを確認すると、”日本庭園”、”白鳥”の文字が。中庭のような小さなお庭があるのかな?白鳥ってオブジェ?

酒造メーカーで精油作りで日本庭園ってどんな場所なんだろうとちょっとわくわくしながら到着し、守衛さんに目的を告げ酒樽の前で待っていると、小柄でかわいらしい妹尾綾さんが迎えに来てくださいました。

「まずは庭園と館内をご案内しますね」と本来は団体さん対応と思われるガイドの方とお二人で私をステキな日本庭園へといざなってくださいました。

庭園を入るとすぐに目に入る大きな池は、1950年代初めに焼酎の冷却水の貯水用として作られたもので、近くを流れる川から水を引き入れているそうです。現在は約100匹もの色鮮やかな錦鯉が泳ぎ、白鳥がかわいい表情を見せてくれる鑑賞池として私たち訪問者を迎え入れてくれます。

でもなんで白鳥なんだろう??かわいいからまぁいいか…笑

精油作りにつながるお酒作りの見学

池の周りをぐるっと回るように散策し、その後は焼酎、清酒、梅酒を製造する工程を見せて頂きました。

目の前にそびえたつ日本酒のタンクはなんと高さ9メートル!!見上げてもてっぺんが見えないくらい大きく、梅酒のタンクの窓からは、たくさんの梅の実を見ることができます。

場所を移動するとそこには大きな酒樽を再利用したテーブル。試飲会やイベントの会場になったり、スライドの上映をしたりするそうで、この日は清酒作りに使用する酒米を並べて見せて下さいました。

酒米の町、兵庫県三木市生まれですが、酒米を実際に見たのは初めてかも?

そのあとも、梅を使った健康食品の試食、試飲…と施設内を大満喫。精油の取材に来たことをしばし忘れ、楽しい時間を過ごしました。

焼酎を作ったから精油が生まれた!

中野BC株式会社は、昭和7年に醤油作りからスタートした老舗企業。

今はお酒のほか、アロマセラピーに使用する精油まで手掛ける会社です。その歴史は、創業者である故中野利生氏がお酒作りにあこがれを持って過ごした少年時代までさかのぼります。

当時は酒作りはお金持ちがやる仕事。あまり裕福ではなかった利生氏は、「将来自分もお金持ちになる!」という信念を持ち続け、その発端として醤油作りを始めたのだとか。

その後、酒作りをスタートするチャンスが。最終目標は清酒ですが、当時免許が採りやすかった焼酎に着手。その蒸留ノウハウが平成も終わる頃になって精油作りという新たな分野に活用されているのですから、歴史ってすごいです。

いきなり清酒だったら、蒸留の技術、無しですもんね…

その焼酎は、海南市の藤城にある中野BC株式会社であること、そして、日本一の富士山にちなみ冨士城と名付け、品質の高いものを作ろうと取り組まれたそうです。

利生氏がお酒作りに憧れを抱かなければ出会うことが無かった、ここにしかない柑橘系の精油のことは、次回のブログで。

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工場見学でお邪魔した和精油メーカー
中野BC株式会社(KISHU‐WAKA)
642‐0034
和歌山県海南市藤白758-45
TEL:073(482)1234/ FAX: 073(482)2244
中野BC株式会社 妹尾綾さんは2018年3月14日、21日のラヘラジに登場してくださいました。

お酒+日本のアロマ+白鳥=※▶☆…:KISHU‐WAKA(和歌山県海南市)

目的地はフルーツ王国!

柑橘系和精油

柑橘系の和精油を作っているところに行きたい!

そう思い、候補を絞っていた高知県と和歌山県。

高知県はユズ精油を作っているメーカーさんが複数ありそれぞれに特徴があります。お取引させて頂いている会社もあるけど、ちょっと距離があるから旅になるなぁ…なんて思っていました。

行くなら柚子の季節!と今私のアロマトリートメントサロンラヘラで使わせていただいている高知の和精油メーカーさんに連絡すると、「機材入れ替えの為、取材は春以降に」、となったのでこの冬に行く場所は和歌山県に決定!

フルーツ王国和歌山。

和歌山にしかない柑橘から精油を抽出している場所で九州に行く前から気になっていたメーカーさんが、KISHU―WAKAをプロデュースされている、中野BC株式会社。

中野BC株式会社は、古くからある酒造メーカーで、かなり前から取材先候補にピックアップしていました。だってなぜお酒やさんが精油作り?って気になるじゃないですか。

その答えは、中野BC株式会社を訪問する前に、九州の精油メーカー未来アロマの舟山さんからの紹介で訪問した株式会社本村製作所で見つけることができました。

※写真は本村社長と蒸留装置

※こちらは中野BCの蒸留装置

「この装置、どこかで見たことある…もしかして…焼酎つながり?」

確信が持てず、

「和歌山に酒造メーカーさんが精油を作っているところがあって、そこも取材させて頂こうと思って…」なんて話を本村社長にすると、

「中野BCですか。」と即答が。

やっぱり焼酎つながりでした。

本村製作所の蒸留装置を使っているなら、品質は間違いないと改めて確信した私は、早速中野BC株式会社に連絡をしたのでした。

精油の取材のはずが…白鳥?!

例のごとく、突然、しかも年末に送った見学と取材依頼を送信。

そんな時期にもかかわらず、「どうぞ、お越しください。精油を抽出しているタイミングが良いですよね」とご連絡くださったのは妹尾さん。

お会いできることを楽しみに年を越し、ついに訪問の日がやってきました。

2018年1月。この日は、爆弾低気圧が関西地方を直撃し、豊中もほんのり雪化粧。

和歌山へ向かう高速道路も、道には雪がないものの、道路脇の樹々にはそれなりの雪で、高速から見下ろす田舎の風景も真っ白。

私、ノーマルタイヤでたどり着けるんだろうか…と不安にもなりましたが、中野BC株式会社のある海南市が近づくにつれて、雪はなくなりお天気も快晴!

海南インターを降りて2分もかからない場所にある中野BC株式会社で私を出迎えてくれたのは、小柄でかわいらしい妹尾さん(女性♪)と3匹の雪のように真っ白な白鳥でした。

酒造メーカーになぜ白鳥?!

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工場見学でお邪魔した和精油メーカー

中野BC株式会社(KISHU‐WAKA)
642‐0034
和歌山県海南市藤白758-45
TEL:073(482)1234/ FAX: 073(482)2244
会社HP:http://www.nakano-group.co.jp/
精油HP:http://www.nakano-group.co.jp/product/other/waka/index.html

中野BC株式会社 妹尾綾さんは2018年3月14日、21日のラヘラジに登場です!

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和精油を通じて考えさせられたこと/六月八日(久恒山林株式会社/大分県中津市)

和精油をきっかけに自然な暮らし方について考える

「”天然自然の山=手つかずの自然”、という考え方もあるのかもしれないけれど…」と切り出した久恒社長(写真左)。

その言葉の通り、山には介入せず自然のまま残し、人は下流で暮らすというのはありかもしれません。

狭い範囲で考えれば。

「でも、よく考えてみると、自分の近くの森だけを天然自然の形で守り、地球上の他のエリアから持ってくるのは間違っているのではないでしょうか。」そうつなげた久恒社長の言葉には、山間地域で林業に携わり暮らしてきたからこそ生まれた葛藤を感じました。

心で山と切り離されて暮らしていたら、それが数十キロ離れた日本の山の木なのか、地球の裏側の山の木なのか、なんて意識は向かないことの方が多いと思います。

例えば、我が家は木造ですが、柱になっている木、壁になっている木の板、どこの国のなんという木なのか知りません。今なら建てる前にいろいろ話を聞いただろうけど、当時の私はそんなこと、気にもしていませんでした。壁の板だって木じゃなくて石膏ボードだったりもするわけですから。

ところが、そんなことに無頓着な都会の住民だって、現実的に考えると、木の家に住むほうが精神的にも身体的にも健康に暮らせるんです。

DNAレベルで知っている森の香りの心地よさ

私たちのご先祖様は二足歩行になる前から、山の木々に囲まれて暮らしていて、植物の香り成分やその他の成分が、自律神経を休め人を含む動物を元気に健康にしてくれることはわかっています。

昔の家は生活圏の範囲で得られる針葉樹・広葉樹・草・竹・土が使われていて、家が生活圏の中の自然そのものでした。その環境の中で、自然の一部として生活していたことの延長が数十年前の日本にはありました。

それが、バッサリ切り離され、工業製品に囲まれた家になってしまった今、自律神経のバランスが崩れている人が多いのは必然なのかもしれません。

私たちが健康に過ごすために必要なフィトンチッドは生きている樹々が出している成分です。木は切られてからもある意味生きていて、水分を吸収したり吐き出したりします。同時に木が持つ成分を少しずつ私たちに分けてくれているんだと思います。それは香り成分だけではないけれど人が生きる力を取り戻すために必要なものなのです。

何十年経っていても、椋木の家やお寺って気持ちいいですもんね。

では木の家を建てよう、となった時、その木をどこから持ってくるのか、が大きな課題になります。

今、日本の山には杉や檜が建材となるべくしてたくさん植えられていて切り出されることもなくそこにあるというのに、現代社会では約8割が海外から持ってこられているそうです。

安価な材を確保するために、アジア・アマゾンの森が切られ消失している事実。

そして、その後地はコーヒー畑、大豆畑になっているという現実は問題。

木を使う以上は自分が使う量と自然の中から得られる量のバランスがとれるような、人と自然の共生を模索せねばならない、と久恒社長は何度もおっしゃられていました。

山にスギやヒノキをどんどん植えて、成長を促進してとことん使い尽くすという今までの林業の在り方が正解だったかというとそうでもありません。スギだけが密集、ヒノキだけが密集している森は不自然で、人類と自然が共生している姿ではないのです。

森の生態系を考えた和精油作り

六月八日の森の写真を見ると、間伐が行き届き、下層植生が豊かになって、スギやヒノキ以外の植物も豊かに茂っていて、動物の姿は写っていないけれど、茂みに潜んでいる気配を感じます。スギやヒノキもほかの植物と競争する刺激、動物や虫の刺激を受けてより良い木に育つそうです。

生態系が豊か(いろんな樹種、いろんな生き物がいること)で、水源かん養機能があって、森林が持つ公益的機能を発揮する森が数十年そこにあって、そこから切り出される木を使うこと、そしてまた新たな木がそこに育つという循環があって初めて人類と自然が共生していると言えると久恒社長はおっしゃられていました。

林業の持続可能性ではなく人類と森との関係の持続可能性を求めているからこそ、頭を悩ませ考え、いろいろな切り口から考え、模索を続けてこられた久恒社長。

そんな中で可能性を見出したのが精油という新たな手段だったのでしょう。

だから、六月八日は精油を売るだけではなく、森を近くに感じる暮らしを提案しているんだと思います。

一筆箋に込められた四季折々の山の姿。樹木が材料になっている布に六月八日の森の植物が描かれたファブリックアイテム。

ただ精油を作って売って終わり、ではない六月八日の取り組みに私も何かしなければ、と突き動かされた訪問でした。

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工場見学で訪問した和精油メーカー

六月八日(久恒山林株式会社)
871-0027
大分県中津市大字上宮永3番地1
TEL:0979-22-7944 / FAX:0979-22-2822
HP:http://rokugatsuyohkanomori.jp/

久恒山林株式会社の皆さんは2018年2月7日、14日のラヘラジに登場してくださいました。

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日本でローズオットー?!マリーラフレさんとの出会い:六月八日/久恒山林株式会社(大分県中津市)

日本産のローズオットー精油?!

「古山さん、この香り試してみてください」

そう言って常務が差し出してくださったおよそ100ml入りのの遮光瓶の中には液体が四分の一ほど。

「ローズオットーだ!」

香りをかいだ瞬間そう思ったのですが、日本国内の規模ではローズの精油を抽出するなんで夢のまた夢のような話。

この精油の正体は、ゼラニウム。

六月八日の国産ゼラニウム精油

六月八日では、大分県でハーブを作っているマリーラフレさんのハーブ園から仕入れたゼラニウムを蒸留して精油を作っています。

ハーブ園は標高800mの場所にあり、冬は霜や雪で枯れてしまうハーブもあります。ゼラニウムもそんなハーブの一つで、マリーさんのハーブ園ではビニールハウスの中で大切に冬を越すそうです。

2014年の11月、強烈な寒波がやってきました。不運は重なるもので、マリーさんがローズゼラニウムを栽培しているビニールハウスはこの年の秋の台風で破損したまま。

このままでは、せっかくのローズゼラニウムが寒波で一気にダメになってしまう…。その前に何とかしてこの恵みを残したいと思ったマリーさんは、勇気を出して1本の電話をかけます。

「ゼラニウムを精油にして欲しい」

その電話を掛けた相手が六月八日。久恒さん一家はその電話でマリーさんの存在を初めて知ったそうです。

でも、マリーさんは六月八日のことを以前から知っていました。

大分県の小さな村に農家の嫁として嫁いだカナダ出身のマリーさん。カナダでは林業系の大学を出て、国立公園のガイドやハーブ園勤務の経験があり、自然や植物に対する知識が深いんです。

マリーさんは”地域の役に立つことができれば”とハーブ園をつくり、そこで育てたハーブを使ったお茶や野菜を大分オーガニックマーケットで販売をされていた時、同じくそのマーケットに商品を置いていた六月八日のことを知っていました。

寒波がやってきたとき、頼める先はここだ!と直感で思ったんでしょう。

それを感じ取った久恒さんは、「ハーブの蒸留は初めてのことだったが、その可能性を感じ引き受けたんです。そうしたら、すぐに軽トラ一杯のローズゼラニウムを積んだマリーさんが来られてね…」と懐かしそうにお話してくださいました。

試験抽出したゼラニウムの精油を近隣のアロマセラピストさんたちににテイスティングしてもらうと、かなり評価が高く、まずは芳香蒸留水を化粧水基材として販売開始。
ゼラニウムの精油は採油率が低いので、販売するだけの量を抽出するのは本当に大変だし、どうしても価格が高くなってしまいます。

「価格は高くなっても、その価値をわかってくださる方の手元に届けばそれでよいじゃないか、マリーさんのローズゼラニウムの良さをもっと知ってもらいたい!蒸留技術を持った自分たちが世に広める活動をしていかないといけない。」

と考え、精油の販売をスタートしたり摘みたてのゼラニウムを蒸留するイベントを行なったり、六月八日とマリーさんのコラボレーションが加速したのでした。

ローズゼラニウムの花芽だけで精油抽出

そして冒頭のローズオットーのような香りの精油。

ローズゼラニウムは花芽が一番が良い香りがするからやってみようか、と花芽だけで蒸留をしたら驚くほど華やかな香りの精油の抽出に成功したのです。

でも残念ながら…花芽だけで抽出した精油は販売されていません。

海外から輸入され、大手メーカーが販売しているゼラニウム精油と六月八日のそれの成分分析表を比較すると、ゲラニオールの量が圧倒的に違うなど、香りの差は数字にも表れています。

日本で栽培したから、ではなく、マリーさんが手間暇かけて大切に育てたからハーブそのものの力が最大限に引き出され、よい香り成分をたくさん作ったのでしょう。そしてその新鮮なハーブを、六月八日の久恒さんが丁寧に蒸留するから、香り成分を余すことなく精油にすることができるのでしょう。

現在六月八日で取り扱っているのは精油9種、リフレッシュウォーター2種、芳香蒸留水3種。

そしてそれを使うためのアイテム(アイピロー、香りのキャンパス、レターセットなど)。

こういう周辺のアイテムが充実しているのも六月八日の特徴ひとつで、そこにも久恒さん一家の熱い想いが込められているのです。

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工場見学でお邪魔した和精油メーカー

六月八日(久恒山林株式会社)
871-0027
大分県中津市大字上宮永3番地1
TEL:0979-22-7944 / FAX:0979-22-2822
HP http://rokugatsuyohkanomori.jp/

久恒山林株式会社の皆さんは2018年2月7日、14日のラヘラジに登場してくださいました。

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